金融教育の豆知識

2022.11.22

知っておきたい金融教育の現状と課題。
これからの教育に求められることとは?

日本では、金融広報委員会が「金融教育元年」と名付けた2005年より、児童や生徒への金融教育の推進に取り組んできました。
2022年からは学習指導要領の改訂により、高校での金融教育が拡充されましたが、そもそもなぜ今、金融教育の必要性が高まっているのでしょうか。
この記事では、金融教育が必要な理由や、日本の金融教育の現状、これからの金融教育指導で工夫すべきポイントについて解説します。

金融教育が必要な理由

金融教育が必要な理由は、大きく分けて2つあります。

まず1つ目は、自立する力の育成を支援するためです。
自立して生計を立てるためには働いて収入を得ることが基本となりますが、そのためには働くことの大変さや楽しさ、意義を理解するとともに、働くことを通じてお金の価値の重さや有限性を知ることが重要なポイントになります。
社会に出る前の学生の段階で金融教育を受けることで、自立のために必要な金融の知識や思考力を身につけることができます。

2つ目は、社会と関わる力の育成を支援するためです。
他者との関わりによって生活していく社会の原理を、金融の働きや経済の仕組みなどを通じて理解を促すことができます。また、周囲の人や社会に感謝する心を養い、よりよい社会を形成していこうという意識を培うことが可能です。

金融教育の必要性など詳細について、「金融教育とは?2022年から高校で拡充された理由や必要性、内容について解説」のページも参考にしてください。

日本の金融教育の現状を知ろう

日本の金融教育が十分でないイメージ

現代日本には金融教育が必要不可欠とされていますが、現状の日本では金融教育は十分に行われているのでしょうか?

金融広報中央委員会が実施した「金融リテラシー調査(2022年)」の結果によると、学校において金融教育を「行うべき」との意見は71.8%あります。[注1]
一方で、「行うべき」と回答した人のうち、実際に学校で金融教育を受けたと認識している人はわずか7.9%に留まっています。
学生や社会人を対象にした調査でも、金融教育を「受ける機会があり、受けた」と回答している人は7.1%と低い一方、「受ける機会はなかった」と回答した人は75.7%にも及んでおり、ほとんどの人が学校もしくは職場で金融教育を受けた経験がない実態が浮き彫りになっています。

また、学校や職場だけでなく、家庭においても「金融教育を教わる機会はあった」と回答した人が18.4%であるのに対し、「教わる機会はなかった」と回答した人は64.7%と半数を超えており、多くの人がさまざまな場面で金融教育を受ける機会に恵まれていない現状が見えてきます。

さらに興味深いのは、児童や生徒に対して金融教育を行う側である教員についても、金融教育を「受ける機会があり、受けた」と回答している人が8.2%しかいないことです。

前述の通り、2022年からは高校での金融教育が拡充されましたが、調査結果を見る限り教える側も十分な金融教育を受けてきたとは言えず、必要な知識をどのように取り入れるかが現状の大きな課題となっています。

なお、金融教育を受ける機会がなかった弊害は金融知識に対する自信に顕著に表れています。
金融知識に関する日本人の自己評価は「平均的(42.3%)」に次いで「どちらかといえば低い(27.5%)」「とても低い(14.4%)」という結果が出ています。[注1]
全体で見ると金融知識に自信がある人の割合は12%と低く、米国の71%の1/3にも及んでいないのが現状です。

[注1]:金融広報中央委員会 知るぽると「金融リテラシー調査(2022年)」p21
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2022/pdf/22literacyr.pdf

授業時間の確保状況

金融教育を受けたことがないと回答した人の割合が大きいことは、学校における金融教育の実施時間のデータからも見て取れます。

日本証券業協会が公開している「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」によると、学校における年間の金融教育の時間数について、中学1年、2年では「0時間」と回答した割合がそれぞれ半数を超えて最多となっています。[注2]
中学3年~高校3年でも「1~5時間程度」がそれぞれ最多を占めており、最も多い高校1年生でも授業で金融教育を受けている割合は約8割で、残り2割は「0時間」です。

教員を対象に実施した設問でも、金融教育に関する授業時間が「やや不十分」「不十分である」と回答した人は約6割を占めており、教育現場でも金融教育が不十分であるという現状に対して疑問・不満を感じている人が多いことがうかがえます。[注2]

[注2]日本証券業協会「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」p13・14,p21
https://www.jsda.or.jp/about/kaigi/chousa/kenkyukai/content/jittai_rep.pdf

これからの金融教育指導で工夫すべきポイント

金融教育指導で工夫するイメージ

2022年からの高校における金融教育の拡充にともない、高等学校家庭科では「家庭基礎」と「家庭総合」の2科目において金融教育を盛り込むことになりました。

「家庭基礎」では、高等学校の卒業段階において自立した生活者として必要な実践力を育成することを重視した基礎的な知識を学びます。
一方の「家庭総合」では、生涯を見通したライフステージごとの生活を科学的に理解させるとともに、主体的な生活設計や生活文化の継承・創造など、生活の価値や質を高めて豊かな生活を創造するための知識を学習します。

新しい金融教育を授業に取り込むためには、従来とは異なる指導を模索すると同時に、教育する側も実践的な考察ができるよう工夫することが求められるのです。

以下では、2022年4月に改訂された高等学校学習指導要領における金融教育(消費者教育)に関する主な内容を紹介します。

生活における経済の計画

家庭基礎および家庭総合では、生活における経済の計画として、それぞれ身につけることができる指導目標が設定されています。[注3]

家庭基礎における指導目標
  • (ア)家計の構造や生活における経済と社会との関わり、家計管理について理解すること
  • (イ)生涯を見通した生活における経済の管理や計画の重要性について、ライフステージや社会保障制度などと関連付けて考察すること

(ア)については、可処分所得や非消費支出の分析といった具体例を通して家計の構造を理解させるとともに、家庭経済と国民経済との関連性など、経済循環における家計の位置づけとその役割の大切さについて理解してもらえるよう指導を行っていきます。[注4]

家庭基礎では、収支のバランスの大切さやリスク管理を含む基本について十分理解できるよう指導することが大切です。

(イ)については、家庭基礎では各ライフステージの特徴や課題、家族構成や収支の変化、生涯賃金や働き方、社会保障制度などと関連づけて考えられるよう指導するのがポイントです。[注4]

家庭総合における指導目標
  • (ア)家計の構造について理解するとともに生活における経済と社会との関わりについて理解を深めること。
  • (イ)生涯を見通した生活における経済の管理や計画,リスク管理の考え方について理解を深め,情報の収集・整理が適切にできること。[注3]

(ア)について、家庭総合では、キャッシュレス社会の利便性と問題点を理解したうえで、慎重な意思決定が求められることについて具体例を通して理解できるようにします。[注4]

(イ)について、家庭総合では、人生を通して必要となる費用がライフステージごとに異なる点について理解を深めるとともに、生涯を通じて収支に関心を持つことの大切さを教えます。
また、将来起こりうるリスク(病気や事故、失業など)に備えた資金計画について、具体例を提示して考察できるよう配慮します。[注4]

資金計画について指導する際に用いる具体的な事例には、たとえば家庭基礎なら給与明細を教材にしたり、家庭総合なら電子マネーや仮想通貨の利便性・課題を取り上げたりするなどの方法が挙げられます。

なお、金融教育は家庭科だけでなく、「公民」にも取り入れられます。[注3]
公民では、現実社会の諸課題に関わる具体的なテーマを設定し、幸福や正義、公正などに着目しながら、他者と協働してテーマを追究・解決する活動を行います。
その中で、法・規範の意義や役割、多様な契約および消費者の権利と責任、職業選択や雇用と労働問題について知識を身につけられるよう、適切な指導・教育を行っていきます。

[注3]文部科学省「学習指導要領における消費者教育に関する主な内容(抜粋)」p13・14,p13,p10
https://www.mext.go.jp/content/20201027-mxt_kyousei02-20201027110736_2.pdf

[注4]文部科学省「【家庭編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」p39,p75
https://www.mext.go.jp/content/1407073_10_1_2.pdf

まとめ

日本では、これまで学校、職場における金融教育に十分な時間や機会を設けることができませんでした。
こうした現状を鑑み、国では学習指導要領を改訂し、学校に通う児童や生徒に対する金融教育の推進に取り組んでいます。

特に2022年からは高校で金融教育が拡充されたため、学習指導要領などをもとに生徒たちに適切な教育を行うことが求められます。

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